『教育不信と教育依存の時代』

廣田照幸『教育不信と教育依存の時代』(紀伊国屋書店、2005)
おすすめ。

(1)神戸出張6日目。強い陽射しのなか、日傘をさす女性たちを横目に坂道をふうふういいながら登っていると、ここはどこの国だ?、これで仙台と同じ国か?、という気がしてくる。片手にタオル、片手に扇子ときどきボールペン、というスタイルで、高校の先生方の話を聞く。こちらも大学という教育現場にいるので、本来の趣旨をそれて「今の教育は……」という話題になることが結構ある。能率は上がらないが、いろいろと考えさせられることが多い。

(2)教育の問題を論じたり考えたりしていると、他人事ではないので、ついついヒートアップしてくる。こういうときに「解熱剤」として役に立つのが廣田さんの本だ。この本でも、例によって冷静沈着なスタイルで、最近の「教育改革」ブームを批判し、教育に多くを期待しないこと、何もしないという選択を考慮に入れること、といった、およそ俗受けしそうもないことを勧めている。この本にも収められている2003年の仙台での講演における廣田さんのクールなそっけなさ(というか仏頂面…というか)と講演内容の熱さとを思い出しつつ、「cool head and warm heart」というスタンスに想いをはせる。

(3)大切なのは、これら所説の背景には、かならずデータの裏付けがある、ということだ。教育史学という歴史的なアプローチを採用する領域の強みが、ここにある。