『競争秩序のポリティクス』

雨宮昭彦『競争秩序のポリティクス』(東京大学出版会、2005)
いただきもの。
おすすめ。

(1)日本の西洋経済史学の王道を行く、重厚な経済政策思想史研究の一冊。第一次世界大戦後から第二次世界大戦後のドイツにおいて大きな影響力を行使した経済政策思想たる「秩序自由主義」の理論的な特質と、それがワイマール共和国の経済構造、ナチスの経済政策、そして西ドイツの「社会的市場経済」思想ととりむすんだ関係を分析する。とくに、これまで社会民主主義あるいはケインズ主義に近いとされてきたナチスの経済政策が、「秩序自由主義」という自由主義の一類型と親和的だったことを明らかにした点は、ドイツ経済史研究に対して大きな貢献をなすだろう。

(2)これまで、この時期の経済政策思想は「ケインズ主義的社会民主主義vs.自由放任」という対立軸で捉えられてきた。これに対して、雨宮さんは、競争を強制するべく国家が介入する「競争促進的な自由主義」という経済政策思想、つまり「秩序自由主義」が存在し、さらには大きな役割を果たしたことを明らかにする。ちなみに、ここでぼくが思い出すのは、かつて岡田与好先生が提起した経済的自由主義の2類型、つまり独占禁止・団結禁止型自由主義と独占容認・団結容認型自由主義、という議論だ。前者は雨宮さんの言う「秩序自由主義」に近いものだと思うが、雨宮さんは岡田先生の所説をどう評価しているのだろうか。

(2)ただし、岡田先生がいう団結禁止・独占禁止型自由主義は、競争を促進する手段としては、独占禁止政策しか持っていないものと想定されていた。これに対して、雨宮さんは、「秩序自由主義」が独占の存在そのものは容認したうえで国家が価格を設定するべく介入するという「かのようにの経済政策」を主張したことを明らかにする。ちなみに、この「かのようにの経済政策」は、なんと、例の社会主義経済計算論争におけるランゲなど市場社会主義派の経済政策観に似ているように思う。もしもそうだとすれば、この類似性の背景には何があるのだろうか。