『自由と保障』

トニー・フィッツパトリック『自由と保障』(武川正吾他訳、勁草書房、2005、原著1999)
いただきもの(徳田さん、いつもかたじけない)。

(1)現在の社会保障は保険と扶助をくみあわせたシステムが主流になっている。これに対して、全ての市民に権利として一定額の所得を保証するという「ベーシック・インカム」というシステムを提案し、そのメリットを説く書。ベーシック・インカムの特徴は、

  • 保険料の支払いを前提とする保険制度に対して、無償である
  • 資力調査(つまり貧乏であること)を前提とする扶助に対して、無条件である

という点にある。

(2)こんなシステムに対しては、当然フリー・ライディングを誘発するものだという批判がなされることだろう。この本もそれは予想し、いくつかの反批判を展開している(第4章)。ただし、それらは、権利論にもとづく規範的なものか、あるいは「そんなにコストはかからないだろう」といったプラグマティックなものにとどまり、フリー・ライディングを論じるのであれば念頭に置くべき経済学的な議論はなされていない。

(3)この本を読んで考えさせられたのは、本の趣旨からは外れるかもしれないが、保険というシステムの複雑さ、というか難しさ。保険というのは「大数の法則にもとづいて」「自力で」リスクをヘッジするシステムだと思うが、最近は

  • リスク細分化保険というかたちで、前者の土台を揺るがす事態が進行している
  • 政府がかなりの金額を拠出し、それゆえ「自力で」とはとてもいえない公的な社会保険が大きな役割を果たしている

という状況がみられる。リスク・ヘッジのシステムとしての保険は、この先どうなってゆくんだろうか。興味深いところではある。