『福祉国家の一般理論』

ポール・スピッカー『福祉国家の一般理論』(金子充他訳、勁草書房、2003、原著2000)
いただきもの(読むのを忘れていた…)。

(1)福祉国家についての概説書。その特徴は、社会のありようから議論を始めて福祉国家の諸機能を導きだすことにある。ちなみに7ページに

1.人は社会のなかで生活しており、互いに義務を負っている。
2.福祉は社会的行為によって獲得され維持される。
3.福祉国家は社会における福祉を促進し維持するための手段である。

という要約がある。

(2)ちょっと要約しなおすと

  • 人は独りでは生きていけない
  • だから、たがいに(基本的には)利他主義的な義務を負う
  • だから、連帯する
  • だから、様々な福祉が正当化される
  • だから、そのツールとして国家を利用するというアイディアが生まれる

という感じか。

(3)これだけ聞くと「ごもっとも」という気もするが、その一方で、なんか「違う」という気もする。この違和感の原因は、たぶん次の点にある。この本は「人は独りでは生きていけない」ということから「たがいに(基本的には)利他主義的な義務を負う」という結論を導きだしているが、ぼくだったら前者から「たがいに利己心にもとづいて関係をとりむすぶ」という結論を導きだすだろう。つまり、この本には、利己心にもとづいて社会は形成しうるという観点が弱いように思う。たしかにところどころで社会形成における利己心の働きに言及はされているが、それは、あたかも単なるリップサービスであるかのごとく、ただちに忘却されてゆく。利他主義と連帯と互いの義務のうえに福祉国家が展望されてゆく。気持ちはわかるけれど、でもなぁ…。