『離脱・発言・忠誠』

アルバート・ハーシュマン『離脱・発言・忠誠』(矢野修一訳、ミネルヴァ書房、2005、原著1970)
おすすめ。

(1)組織論をはじめとする社会科学に多大な影響を与えた名著の新訳。旧訳(『組織社会の論理構造』、三浦隆之訳、ミネルヴァ書房、1975)は久しく絶版だったし、訳文も(必要に迫られて読んだことがあるが)いまいちだったので、まさしく待望の新訳といえるだろう。

(2)「とりかえしのつく損失」の「回復のメカニズム」として「離脱」と「発言」という2つのオプションを挙げ、両者の関係を様々に考察する。

  • 経済学は前者を、政治学は後者を、各々不当に重視してきた
  • 両者は、順調連関にある場合もあれば、逆調連関にある場合もある
  • 価格上昇と品質低下は、クライアントの側に異なる行動パターンをひきおこす
  • 発言オプションは離脱オプションよりコストがかかる

といった示唆的な言及がてんこもりで、じつに「お得」な一冊。

(3)たとえば、最近の義務教育学校学区制廃止問題について考えようとするとき、この本はべらぼうに役立つだろう。シンプルにしてオリジナルな着眼点にもとづき、応用可能性に富んだこういう本こそ、まさに「古典」の名にふさわしい。