『社会ケアサービス』

ヨルマ・シピラ編著『社会ケアサービス』(日野秀逸訳、本の泉社、2003、原著1997)
いただきもの(読むのを忘れていた……ブログがほとんど不良債務の在庫一掃の場と化している)。

(1)育児、高齢者ナーシング・ホーム、障害者デイケアなど、いわゆる「社会ケアサービス」の定義、歴史、展望について、社会ケアサービスの本場である北欧諸国を事例として論じる書。女性の社会進出に伴って保育サービスの拡充が進み、また、介護保険の導入によって「デイケア・センター」の送迎車が町中を走りまわるようになった今日の日本では、社会ケアサービスとは何かについて考えることは必要かつ有益だろう。

(2)この本によれば、社会ケアサービスとは「救貧とも社会保障とも社会事業とも異なる一連の諸原理に立脚して展開される、独特な社会政策」(12ページ)を意味する。具体的には、その特徴は

  • 任意なサービスである
  • 費用の一部は公的資金でカバーされる
  • ワーカーと顧客の間には相互作用が存在する

という点にある。つまり、社会ケアサービスは、公的扶助など他の社会政策とは異なる「原理」のうえに構成されている(、らしい)。

(3)それにしても、社会ケアサービスの「任意」性を担保するにはどうすればいいのだろうか。この本を読むと、そんな問題につきあたる。つまり、任意性が失われれば、サービスを受けるものは受動的な存在としてスティグマを与えられてしまう。ところが、サービスを受けるものを「消費者=主権者」とみなす市場原理を導入すれば、任意性は担保されるが、それはそれで費用の一部を公的資金でカバーする理由がなくなってしまう。北欧諸国が「受給者(受動的存在)的視点」と「市民的視点」と「顧客(消費者=主権者)的視点」の間で試行錯誤してきたのは、この問題に直面したからなのだろう。国家と市場の間に「第三の道」を見出すのは、ここでもまた、困難な営みとしてたちあらわれる。もちろん、それでも試行錯誤を続けているところに、北欧諸国の底力があるのだが。