『言語はなぜ哲学の問題になるのか』

イアン・ハッキング『言語はなぜ哲学の問題になるのか』(伊藤邦武訳、勁草書房、1989、原著1975)

(1)言語哲学の歴史をたどる概説書+α。「厨先生」こと稲葉振一郎くんが「せめてハッキング『言語はなぜ哲学の問題となるのか』と戸田山『科学哲学の教室』くらい読んでから出直してきなさい」とのたまうので、『科学哲学の冒険』は読んでいたのでよいとして、この本をあわてて購入。でも、最近頭を使っていない(体というか足を使っている+腰痛で死んでいる)ので、抽象的な話が頭に入ってこない。

(2)この本によれば、哲学の領域では、そもそも言語は「本質的に私秘的(プライヴェート)なもの」とみなしてきたが、19世紀に至って「本質的に公共的(パブリック)な何ものか」とみなされるようになった(4ページ)。いまや言語はコミュニケーションの次元で捉えられなければならない、というわけだ。他方で、この本はチョムスキーの「言語構造が人間に生得的だというテーゼ」(7ページ)にもとづく立場を重視している。この立場は、いずれ認知科学に接合されることになるだろう。かくして、一昔前に一世を風靡した「言語は独自の実在である」とする構造主義的でポストモダニズム的な言語観は、いまやこの2つの立場に挟撃されることとなった。ちなみにこの言語観が歴史学の領域に反映されたものこそ「言語論的転回」であるわけだが、大丈夫か言語論的転回派。