『未来をひらく歴史』

日中韓3国共通歴史教材委員会編『未来をひらく歴史』(高文研、2005)

(1)日中韓3国の歴史研究者たちからなる市民団体が3年をかけて編集した、東アジア近現代史の歴史副教材。3国で同時に刊行されるが、

私たちは、「つくる会」の歴史教科書を、日本の過去の侵略戦争や植民地支配を正当化し、歴史の事実を歪曲する教科書、自国中心の排外主義からアジアを蔑視し、偏狭なナショナリズムをあおる教科書だと批判してきました(あとがき)

という記述からもわかるとおり、いわゆる「自虐史観」の立場に立っている。では、それが悪いかというと、ぼくはまったくそう思わない。感覚のレベルでいうと、「つくる会」系の「自由主義史観」(というか、「自虐史観」の対極に立つと称しているから「自慰史観」というか)は、あまりにひ弱で、かっこうわるいからだ。

(2)この本の問題は、3国の参加者が合意したことだけを書いている点にある。合意にこぎつけた努力は高く評価されるが、むしろ合意できなかった点について、諸見解を並列的に書くべきではなかったか。この本は歴史教育の副教材だが、歴史教育では、史実を知ることもさることながら、ものを考える力を身に付けることも大切な目的だろう。そして、そのためには、多様な見解を比較し、自分で検討することが役立つはずだ。もちろん、この本と「つくる会」教科書を読みくらべればよいのかもしれないが、それも大変そうだし。