『民主主義対民主主義』

アレンド・レイプハルト『民主主義対民主主義』(粕谷祐子訳、勁草書房、2005、原著1999)
いただきもの(またも、徳田さんかたじけない)。
おすすめ。

(1)比較政治学の古典の翻訳。日本を含む36か国を対象に、民主主義のあり方を2つのタイプに分類し、各々の特徴を析出するとともに、そのパフォーマンスを比較する。まず現存する民主主義は「多数決型」と「コンセンサス型」に大別し、前者と後者を

単独過半数内閣への執行権の集中vs.広範な多党連立内閣による執行権の共有
執行府首長が圧倒的権力をもつ執行府・議会関係vs.均衡した執行府・議会関係
二大政党制vs.多党制
単純多数制vs.比例代表制
集団間の自由な競争に基づく多元主義的利益媒介システムvs.妥協と協調をめざした「コーポラティズム」的利益媒介システム
単一で中央集権的な政府vs.連邦制・地方分権的政府
一院制議会への立法権の集中vs.異なる選挙基盤から選出される二院制議会への立法権の分割
相対多数による改正が可能な軟性憲法vs.特別多数によってのみ改正できる硬性憲法
立法活動に関し議会が最終権限をもつシステムvs.立法の合憲性に関し最高裁または憲法裁判所の違憲審査に最終権限があるシステム
政府に依存した中央銀行vs.政府から独立した中央銀行(3ページ)

というように、10個の対立軸に沿って対置し整理する。そして、マクロ経済運営、暴力抑制、寛容という点について、コンセンサス型のほうが優れていることを、統計的に明らかにする。

(2)この本の結論は「政府運営の効率性と民主主義の質とはトレードオフ関係にはない」(235-6ページ)というものだ。こういった常識を覆すような所説を、かなり明快な統計処理にもとづいてみちびきだすところが、この本の醍醐味だろう。