『支配なき公共性』

梅木達郎『支配なき公共性』(洛北出版、2005)

(1)隣のキャンパスに勤務し、先日急逝したフランス文学者・現代思想研究者の遺著。一度しかお目にかかったことはないが、万感の想いをこめて手に取る。

(2)内容は、というと、デリダ、ジュネ、ハイデガーアーレントといった哲学者・思想家を論じつつ、他者を排除しない空間をどう作ればよいかを考える。フランス文学にも現代思想にも疎いぼくだが、ざっくりまとめると「〈こちら側〉と〈あちら側〉がいるけど、両者の対立と並存のなかからなにか解決策が生まれるんじゃないか」と考える「弁証法の思想」から「〈こちら側〉と〈あちら側〉を分かつ境界線って、じつは曖昧なものなんじゃないか」と考える「臨界の論理」に移行するべきことを説いている。らしい。多分。

(2)そんな現実離れしたことを考えてなんの役に立つのか、という感じがするかもしれないが、フランスにおけるいわゆる不法滞在者を論じる「国家・無縁・避難都市」を読むと、「臨界の論理」はアクチュアリティをはらんでいることがわかる。でも、なぜ「弁証法の論理」じゃダメで「臨界の論理」ならいいのか、これは依然として不明。もちろんこれはぼくの知識不足の故なんだろうが。