『ヨーロッパ近代の社会史』

福井憲彦『ヨーロッパ近代の社会史』(岩波書店、2005)

(1)過去20年来日本の西洋史研究を牽引してきた近代フランス史学者の手になる論文集。19世紀ヨーロッパ史を概観する文章を集めた第1部「工業化と国民形成」、メディア史に関する文章を集めた第2部「メディアと消費文化のはじまり」、社会史の方法論を論じる文章を集めた第3部「歴史研究の現場と歴史学の転位」からなる。東京に出張する旅の友にするつもりだったが、新幹線は架線事故で遅れるし、東京はめちゃくちゃ暑いし、集中して読む気力が…。

(2)個々の論文はとても説得的で、いちいち「なるほど、なるほど、そうだよなあ、そうだったよなあ」と思いながら読んだ。それでは読みおわって満足したかというと、さてどうか。どうも、この本全体を貫くストーリーが十分みえてこない。あるいは、コンセプトがクリアによみとりにくいとか、論文集以上のものではないとか、そんな気がするといってもよいだろう。なーんていいつつ、これはつまり、ぼくの読解力が足りないことを告白しているにすぎないわけだが。

(4)というわけで、福井さんには、以前から予告されているモノグラフ『硝煙のかなたへ--第一次世界大戦とフランス社会』(山川出版社)を早く刊行してほしい。「硝煙のかなたへ」か、魅力的なタイトルだ。