『アイデンティティに先行する理性』

アマルティア・センアイデンティティに先行する理性』(細見和志訳、関西学院大学出版会、2003、原著1999)

(1)著名な経済学者がコミュニタリアニズムを論じた書。大切なテーマだし、内容はわかりやすいのだが、四百字原稿用紙換算で70枚程度の文章に、訳注と役者解説を付けたとはいえ、1890円(税込)という値段をつける出版社の神経に、あきれる。これじゃ酔狂な人以外は手に取らないだろうに…。もしかして、そもそも売る気がないのか?

(2)センの所説を煎じ詰めると、

ということになる。なるほど、まことその通り。

(3)センが批判の対象に措定しているのはコミュニタリアニズムだが、彼の評価と批判は、同様に「アイデンティティ」を重視する思想動向、たとえばポスト・コロニアリズムやポスト・モダニズムに対してもあてはまるだろう。かくも射程が長い議論を含んでいるだけに、この価格設定はなんだ、一体売る気があるのか?、という先の不満に戻る。