『パンとワインとおしゃべりと』

玉村豊男『パンとワインとおしゃべりと』(中央公論新社・中公文庫、2002、初版1997)
おすすめ。

(1)手練れのエッセイストによる食べ物エッセイ。墓参に向かう新幹線の旅の友として仙台駅構内の書店で購入し、車内で読みはじめ、ただちに激しく後悔。しごとが増えたのに対応して不良債権一掃のスケジュールを早めるべく、予定していた9月のフランス行きを断念したのだが、

フランス人は毎日なにを食べているのか? …正解はビフテキ。牛肉をグリル焼きしたものに、フレンチフライド・ポテトをたっぷり添えたもの。「ステック・フリット」と呼ばれるこの簡単料理が、フランス人の日常の食卓に欠かせないナショナル・ディッシュ(国民的料理)なのである。肉の味つけは塩胡椒のみ。好みで辛子をつけて食べる。いわゆる「ソース」は一切ナシ。ただし毎日の食事でも彼らはいちおうコースにして三品(前菜、メイン、チーズまたはデザート)は食べるから、ステック・フリットの前に、たとえばトマトやニンジンのサラダとか、ソーセージやパテなどすぐに食べられる冷菜、あるいは茹でタマゴのマヨネーズかけといったものを一皿食べる。そして、パンを食べながら肉とジャガイモをかたづけ、その皿に青菜(レタス)のサラダを取って食べ…最後に果物かお菓子かなにかで締めくくる、のである(86〜7ページ)

といった描写を目で追いながら千々に心が乱れる。ああ、ニンジンのサラダ、パテ、パン…。やっぱりフランスに行きたい。無理だけど。

(2)ぼくは日本最高の食べ物エッセイストは東海林さだおだ(が、彼のマンガはつまらない)と信じて疑わないが、玉村豊男も負けてはいないのだった。