『近代ヨーロッパ史』

福井憲彦『近代ヨーロッパ史』(日本放送出版協会、2005)

(1)15世紀から20世紀のヨーロッパの歴史を概観する、放送大学の教科書。よくまとまっていて、穏当で、目配りもよく、他方で、基本的には総花的で、個々の論点の展開については物足りなくて、総じていかにも教科書らしい教科書といえるだろう。それにしても、歴史について型破りな概説書を書くことは、いかに難しいことか。

(2)福井さんのアーギュメントが突出していて興味深いところは、19世紀末を論じる第10章「科学技術の実用化と産業文明の成立」だろうか。この時代の科学技術の特徴を「見えないものをみる」(122ページ)ところに求めているのには、唸る。

(3)それにしても、「近代」をタイトルにうたいながら、最後まで「近代」の定義がない。これは意図的なんだろうか。