『パワー・エリート』 下巻

チャールズ・ライト・ミルズ『パワー・エリート』(下巻、綿貫譲治・鵜飼信成訳、東京大学出版会、1969、原著1956)』

(1)上巻の印象がイマイチだったので、読むか読まないか迷いつつ、どうにかとっつきはじめる。でも、下巻のほうが言いたいことがはっきりしていて、読んでよかった。ようするにメイン・テーマは「多元主義的な権力均衡理論」に対する批判だったんですね(ご教示いただいたとおりでした)。たしかに、権力均衡理論の論者は複数政党による政権交代とか三権分立とかのメリットを称揚するが、でもそれらの担い手の間に質的な差がないのでは、大した意味はないだろう。

(2)ちなみに政権交代の意義を説く論者は、市場メカニズムのアナロジーを政治メカニズムの説明に導入し、

  • 有権者は複数の政策を比較考量し、選択できる
  • 有権者の選択能力に直面して政党は政策をリファインする

といった見解を提示することが多い。でも、第1の点については

という批判が可能だろう。第2の点については

  • アンソニー・ダウンズによれば、「1争点・2政党」というシンプルなモデルで考えると、両者の政策は大差ないものになることが証明できる

という反論が可能だろう。それも含め、権力均衡のメリットってなんだ?

cf.アンソニー・ダウンズは、ジェームズ・ブキャナンケネス・アローと並び、政治をはじめとする「市場外部の意思決定」の分析に経済学的なアプローチを導入する「合理的選択論(または公共選択論・社会的選択論)」の創始者。でも、他の2人と比較して、いまいち知られてないんだよなぁ。なぜだろうか?

(3)ついでに、ミルズは

大学教授、あるいは浪人インテリである政治分析者たちは、かれら自身、一般に権力の中間水準に属する人々である。かれは、権力の頂点については、ゴシップによって知るだけであり、底辺については、もし知っているとすれば、たんに「研究」の結果によって知っているにすぎない。しかしながら、かれは、中間水準の指導者たちとは気安い。そして、自分自身が話し手の側に回っているので、かれらの「かけひき」も、よくわかるのである(116-7頁)

という指摘をしているが、これってあたってる感じがする。キツいしイヤミだけど。