『リクルートという奇跡』

藤原和博リクルートという奇跡』(文藝春秋・文春文庫、2005、初版2002)
おすすめ。

(1)いまや教育界の論客にして、東京都杉並区の中学校の民間人校長でもある、元リクルート社員の手になる、リクルート時代の回想録。買って読みはじめて既視感があるので、なぜだろうと考えてみたら、ハードカバーで出たときに買っていたんだった。記憶力の減退にあきれかえる。

(2)プロローグとエピローグでは、河野栄子・前リクルート社長に対する私怨があふれており、読んでいてげっそり。こんなまわりくどい、もったいぶった、ねちねちとした批判を、なにが悲しゅうて、こういう場でわざわざ書くのか。別のルートがあるだろうに。

(3)リクルート事件に関わる部分は、一種の「失敗学」のケーススタディとしても読むことができ、面白い。また、リクルートが当時としてはとても非・日本的な企業風土をもっていたことがよくわかり、いろいろと考えさせられる。

(4)と書きつつ、ケーススタディの意義については、ぼくにはよくわからない。去年学部ゼミで一橋大学が作ったケースブックを読んだのだが、学生諸君から「どう読めばよいか、全然わかりませーん」という意見が噴出。だって、ケースを特殊なものと考えれば、他には応用不能だから、読む意味はない。その一方で、ケースを一般化・抽象化してゆくと、最後に残るのは「頑張りました」か「ラッキーでした」だけだから、これまた読む意味がない。どのレベルまでケースを一般化・抽象化すれば、どういうメリットがあるか、その辺をちゃんと論じておく必要があるんじゃないだろうか----という話を一昨日に台風下の札幌で知人にしたら、ハーバード・ビジネススクールのケースブックにはちゃんと書いてあるらしい。うーむ、やはり見ておく必要があるんだろうか。でも、ハーバードのケースブックって英語だろうしなあ…。