『公共哲学とはなんだろう』

桂木隆夫『公共哲学とはなんだろう』(勁草書房、2005)
いただきもの(徳田さん、かたじけない)。

(1)最近流行の公共哲学の教科書。全体の構成は

といった感じ。

(2)特徴は、「下からの公共性」の契機として市場を重視すること。というわけで、市場がどう論じられているか、とくに市場の学である経済学が適切に理解されているか、といった点がポイントになるが、さて。この本は

私は、市場が、われわれの生活に働いている様々な力のバランスを維持して、自由な社会を特徴づける公共的な機能を果たしている(市場倫理あるいは下からの公共性)と考えています。その意味で私の立場は市場=弱肉強食論ではなく、市場=秩序論です。と同時に、私は、市場が市場倫理を維持する自律したシステムではなく、国家権力などの共通の権力の支えを必要としている(上からの市場主義あるいは上からの公共性)と考えています。市場は、上からの公共性と下からの公共性の相補性ないしはバランスによって、市場の秩序を維持しているという考え方です…。市場は、弱肉強食の場でも富を最大化する器でもなく、異なる人や共同体の間の平和(市場平和)を維持する仕組みなのです(201頁)

という市場論を展開する。でも、「異なる人や共同体の間の平和…を維持する仕組み」は、べつに市場じゃなくてもいい、という気がする。市場が「異なる人や共同体の間の平和…を維持する仕組み」だとしても、だからといってそれが「弱肉強食の場」や「富を最大化する器」でないという保証はない、という気もする。経済学とは接点がありそうでなさそうで、こちらの知識不足なんだとは思うが、こういう議論ってフラストレーションがたまる。