『「社会」への知』下巻

盛山和夫他編『「社会」への知』下巻(勁草書房、2005)
いただきもの(またも徳田さん、かたじけない)。

(1)数理社会学会機関誌『理論と方法』2000年記念特集号のハードカバー・バージョン。社会学の最前線にある諸問題について、その道の第一人者が論じる。上巻は理論編だが、アウトプット・モードにあるぼくの頭にとってはハードルが高いので、とりあえず実践編である下巻から。

(2)大別して、前半が調査実践にかかわる論文、後半が解釈にかかわる論文といえるだろうか。前半で面白かったのは第1章「長期継続的な社会調査の最前線」(坂元慶行)。日本人の国民性の長期的なトレンドを調べる「国民性調査」について、調査結果が理論のみならず調査方法にフィードバックされざるをえないことが、説得的に論じられる。たとえば1970年代に「伝統回帰的現象」がみられるようになったことについて、

1970年代以降、さらに新たな展開を見せた日本の経済社会構造は、それに照応した新たな意識の展開をもたらしたに相違ない。「伝統回帰的現象」とは、同一空間上の単純な回帰ではなく、いわば螺旋状の回帰的な変化であり、その動きを旧来の質問で写し取れる空間に射影すれば単純な回帰の如き観を呈するに過ぎないと考えられる。写しとれない空間が新たな動向の空間で、この空間が肥大したと思われる…。こうして、新しい意識構造の解読の一助とすべく、社会調査データの構造を自動探索するためのプログラムを開発したいと考えるに至った(32頁)

というのは、なるほど。

(3)後半については、第5章「実証主義の興亡」(野家啓一)が出色。ヒューム、論理実証主義ポパークワイン、そしてクーンといった、主要な科学哲学者の理論をものすご〜〜〜〜くわかりやすく説明する。これだけで、十分にお値打ち(なにが?)だろう。ちなみに、野家さんは、その延長線上で、自然科学と社会科学の方法の関係について、件の「物語り論」の観点からオリジナルな提言をおこなっている。ただし

社会科学はむしろ自然言語によるカテゴリー化の不可避性を、「物語り論」の観点から積極的に捉え直すべきだろう(122-3頁)

というが、そのためにはどうすればよいのだろうか。うーむ、と唸る、一応「社会科学」者のわたしである。