『「愛国心」のゆくえ』

廣田照幸『「愛国心」のゆくえ』(世織書房、2005)
おすすめ。

(1)日本学術振興会「人文社会科学振興のためのプロジェクト研究事業」という長大な名称を持つ共同研究に参加して1年になるが、その公開シンポジウムが仙台であったので動員、じゃなくて参加。最近頭を使っていないので途中で疲れはてて逃亡し、ドトールのテラスで一服がてらこの本をひもとく。ところが、あまりの面白さにひきこまれ、2時間かけて一気に読了。気付いたらシンポジウムは終わっていたのだった。

(2)教育基本法改正問題にみられるような、いわゆる新保守主義的な教育論をどう捉えればよいかについての、歴史教育社会学者(?)の手になる書。新保守主義が出現してきた社会的な背景を探り、教育の今後を展望したうえで、いま求められているのはリベラルな社会をつくりあげることであり、そのためには現行の教育基本法のほうが改正案よりは「まし」だと説く。

(3)広田さんの本の例に漏れず、この本でも

  • 両極端な議論を廃する
  • 地に足の着いた分析にもとづいて立論する
  • 「理念」とともに「機能」を見据える

といった特徴を持った説得的な議論が展開される。広田さんの所説が説得的なのは、「日本の教育の現在」をひろく世界や社会や歴史のなかで相対化して捉えるというアプローチを採っているからだろう。

(4)欠点といえば、文献リストに欠落が多い。あと、文献リストの邦語文献がアルファベット順というのは、最近流行りつつあるようだが、見づらい。