『夢の行方』

片瀬一男『夢の行方』(東北大学出版会、2005)
おすすめ。

(1)東北大学教育文化研究会が宮城県内の高校生を対象に続けてきた「教育と社会に対する高校生の意識調査」のデータをもとに、教育と社会の関係を「アスピレーション」という視角から分析する。わが職場の出版会ながら、どうもぱっとしない版元である(オフレコ)ため、まったく気付かなかった。

(2)かつて苅谷剛彦『階層化日本と教育危機』(有信堂高文社、2001)は社会階層と学歴が勉学意欲によってリンクされていることを指摘し、衝撃を与えた。この本は、同様な問題関心のもと、勉学意欲である「教育アスピレーション」と、将来の労働意欲である「職業アスピレーション」について、それらが親の社会階層、性別、通っている高校の属性、といった要因とどんな関係をとりむすんでいるかを、実証的に明らかにする。その結果、たとえば

  • 親の社会階層…読書経験…学習意欲…教育アスピレーション…学歴…子の社会階層

というリンクが存在することが明らかになる。うーむ、うちの娘にも読書させねばならんか。

(3)その他、職業アスピレーションについて、低学力の高校生は「セレブになりたい」と思いがちだ、とか、興味深い指摘がてんこもり。これで2000円+消費税は、お買い得。

(4)ただし、この本は教育の抱える問題を「読書」で解決しようというが、この処方箋は有効なんだろうか。「現代の若者は、知への欲望をもっている」(273ページ)というのは、たしかにそうかもしれないが、そうでないかもしれない。

(5)それにしても、この本が批判している、選択と自己責任にもとづく「新自由主義的な教育政策」については、どう考えればよいか。選択の自由を否定するのは、どこか変だ。でも、みんなが選択できるかといえば、そんなことはないだろう。うーむ、難しい。