『ドイツの政治教育』

近藤孝弘『ドイツの政治教育』(岩波書店、2005)
いただきもの(杉田さん、かたじけない)。

(1)「読んで書き、書いて読む」という自転車操業の日々が続いている。もっとも最近は、最後の審判が迫っているせいか「斜め読んでは殴り書き、殴り書いては斜め読む」という一輪車操業の日々になりつつあり、だいぶ煮詰まってきた。というわけで、ドイツの政治教育の歴史と現状を追った本を、気分転換に読む。日本でいうと社会科教育(とくに公民教育)と道徳教育の混成体みたいなものに相当するんだろうか、最近は「シティズンシップ教育」という名前で知られつつある教育領域を、ドイツでは「政治教育」と称しているらしい。この政治教育のあるべき姿を目指してドイツで展開されてきた努力のあとを追いかけ、日本における「シティズンシップ教育」の未来を展望する。

(2)とてもインフォマティヴで、いろいろと興味深い指摘がある。ただし、インフォマティヴ以上のなにかを期待すると、うーむ、微妙である。第二次世界大戦後のドイツでは、民主主義的な手続きがナチズムを生んだという経験のせいか、手続き論的な形式民主主義を退け、特定の価値を教えこむことが重視されてきた(憲法擁護庁とか憲法愛国主義なんてしろものがあるわけだし)。他方では、第二帝政以来国家や共同体といった特定の価値を教えこんできたことの延長線上にナチズムがあったことを反省してか、特定の価値を教育することを避けようとする傾向も続いてきた。この本からは、ドイツの政治教育はこの矛盾のなかで営まれてきたことが感じとれる。ところが、この矛盾への眼差しが、この本には弱い、という感じがするのだが。