『ロボット化する子どもたち』

渡部信一『ロボット化する子どもたち』(大修館書店、2005)
おすすめ。

(1)自閉症研究で知られる認知科学発達心理学者が、ロボット研究の歴史を顧みながら、近年ゆきづまりつつある教育のあるべき姿を探る試論の書。

(2)この本を要約すると、

  • 発達心理学は「刺激と反応の関係を探る行動主義-->人工知能モデルにもとづく認知心理学-->曖昧さをとりあつかう認知科学」へと進化してきた
  • ロボット研究をみると、タスクを分割してプログラムと一対一対応させることによって解決しようとする人工知能モデルは機能しないことがわかる(これがフレーム問題)
  • 自閉症児も、同じ問題に直面しているらしい
  • 問題は、ロボット研究においても、自閉症研究においても、現実の曖昧さをどう処理すればよいかにある
  • 学問的には、これを問題にしているのが認知科学である
  • 同様に曖昧さをとりあつかっているのが、「習うより慣れよ」とか「学ぶより真似よ」とかいった特徴をもつ、伝統的な日本の「学び」のあり方である
  • これを「教え込み型」と対置して「しみ込み型」と呼ぼう
  • ちなみに、今日の教育のゆきづまりは、タスク(課題)を分割してプログラム(解法)と一対一対応させることによって解決しようとするモデル(積み重ね学習)を採用していることから生じる
  • つまり、直面している問題は、今日の教育も、自閉症児も、ロボット研究も、みんな同じなのだ
  • いまこそ伝統的な日本の「学び」の復権を!!

という感じになるだろうか。

(3)自閉症研究とロボット研究を「曖昧さに対する対応」でむすびつけ、そこから今日の教育に対する処方箋を提示するというのは、試論としてものすごく面白い。ただし、「しみ込み型」の場合はかなり高度の動機が必要になると思うが、それはどうやって調達できるんだろうか。学校で教師が「いまから九九をしゃべるから、皆さんはただただ真似くださ〜〜い」といわれて、どれくらいの子どもがついてくるか、ということだ。どこかズレてるような気がするのだが、さて。