『歴史認識と授業改革』

村井淳志『歴史認識と授業改革』(教育史料出版会、1997)
おすすめ。

(1)歴史や地理をはじめとする社会科教育を対象とする「社会科教育学」という学問領域がある。次の仕事の関係で、この領域の業績をいくつか読んできたんだが、諸社会科学者からは「応用」扱いされ、教育学者からは「実践」扱いされ、現場の教師からは「理屈」扱いされるなど、なかなかしんどい学問領域のようだ。そんななかで、社会科教育学を独自の学問領域として自立させようとしたのが森分孝治さんだった。だから彼の書いたものは面白い。

(2)そして、社会科教育学界の明日を担う若手のホープ(というのは、年上の人間に対して失礼ではあるが)といったら、それは村井淳志である…というのは、素人であるぼくの根拠なき断言にすぎないが、しかし彼の書くものもまた面白い。なんといっても目の付け所が斬新だし。

(3)例の従軍慰安婦論争を受けて書かれ、あるべき歴史教育の姿を探る書。一冊の本としてのまとまりには欠けるが、提示される視点はかなり独特で、でも、とても説得的なものだと思う。たとえば、自称「自由主義史観」他称「自慰史観」の提唱者である藤岡信勝さんについて、村井さんは

藤岡氏の教育学は、現場教師に対する学者の啓蒙主義には批判的だが、学習者・子どもに対する教師の啓蒙主義に対しては警戒心が欠けている(22頁)

と批判する。そして、その根底には「教育学の役割は、学習者を代弁する教育学である」(23頁)という村井さんの教育学観がある。な〜〜るほど。