『脳のなかの幽霊、ふたたび』

ヴィラヤヌル・ラマチャンドラン『脳のなかの幽霊、ふたたび』(山下亜津子訳、角川書店、2005、原著2003)
おすすめ。

(1)神経生理学・脳科学の第一人者が脳科学認知科学の最前線を紹介する書。タイトルでひいていたのだが、山形さんの紹介で面白いことを知り、手に取る。脳科学認知科学のあっと驚く世界を、とてもわかりやすく(そしてまた、なかなかわかりやすい訳文で)紹介している。

(1)紹介される脳科学認知科学の知見も興味深いのだが、個人的に興味深かったのは随所で提示されるラマチャンドランの「ものの考え方」。たとえば、痛みを感じると笑ってしまうという「痛覚失象徴」という症候群について、彼はまず、この症候群は、脳科学認知科学の観点から、どう説明できるか、について考える。それだけでも面白いのだが、彼の議論はそこにとどまることなく、それでは「笑い」とはなにか、という問題にまでつきすすんでゆく。そして

笑いというリズミカルな断続音は、遺伝子を共有する近親者に、「このことに貴重な時間や労力を消費するな。あれは間違い警報だ」という情報を伝えるために進化した(40頁)

という、ぼくなんぞには想像もつかないような「笑い」観に到達する。こういう「ものの考え方」には、学問領域を問わず、すごいと思わずにはいられない。

(3)もうひとつ、「ブーバ/キキ」実験(111頁)の含意にも、びっくり。