『独逸社会政策思想史』

大河内一男『独逸社会政策思想史』(全2巻、青林書院、1969、初版1936)

(1)連載決定「名著再訪・20世紀日本の経済学編」の第2回は大河内一男である。第2回といえば5月…家の中も寒いし、最近流行のノロウイルスには感染するし、早く春になってほしいと心から感じる今日この頃。

(2)それは措いておいて、この本は、よく考えられた構成と、古めかしくも流麗な文体があいまって、講壇社会主義の勃興、興隆、衰退をえがきだす一編の長編小説(あるいは大河ドラマ)のような読後感を残す。

(3)ただし、この本を読むことの意義はそれだけにはとどまらない。この本で大河内は、社会政策は合理的な政策判断にもとづく産業界全体の要求の産物であると主張した。でも、ぼくのような素人からすると、社会的弱者の境遇の改善は、産業界全体の要求ではなく、労働運動などの活動の成果であるように思える。かくして、この本をひとつの契機として、社会政策とはなにかという問題をめぐる「社会政策本質論争」が始まった。というわけで、この本はじつに論争の書でもある。

(4)それだけではない。社会政策を「資本制産業社会の自己保存と再生産との条件」とみなすということは、「資本制産業社会」つまり産業界全体には個別の経営を超えた合理性が必要だと考えるということを意味している。ここから、戦時中の大河内は、個別の経営の反対をおしきってでも産業界全体を合理化するべく戦時総動員体制にコミットしてゆく。総動員体制をどう理解するべきかを考える際にも、この本は必読書だろう。

(5)と書いていて、社会政策というのは稲葉厨先生のホームグラウンドであることに気がついた。かえってこ〜〜い。