『フランス・ルネサンス王政と都市社会』

小山啓子『フランス・ルネサンス王政と都市社会』(九州大学出版会、2006)
いただきもの。

(1)16世紀フランスの都市リヨンを舞台に、王権と都市社会の関係を描きだすモノグラフ。著者の小山さんは、そういえば、ぼくの2回目のレンヌ滞在(2000年)と同じ時期にリヨンに留学していたんだった。でもってぼくは病気で早々に帰国し、小山さんは留学の成果をこの本に結実させた…。

(2)16世紀は、世界史教科書的にいえばルネサンスと大航海の時代だが、フランス史に即していえば中世からアンシアン・レジームに移行する端境期にあたる。この時代の王政を「ルネサンス王政」と定義したうえで、16世紀を通じた王権の強化の試みがリヨン都市社会の内部にいかなる構造的変化をもたらしたかを分析する。この「ルネサンス王政」論の背景には周知のトレヴァー・ローパーの「宮廷対地方」というフレームワークがあるが、この時代のイギリスとフランスを比較してみるのも面白いだろう。

(3)小山さんは、王権の強化が、リヨン都市エリートにおける官職保有者の増加を促し、あるいはあいまって生じたことに注意を促す。これによって、16世紀のリヨンを「王権の強化か、都市社会の自立性の維持か」と「都市エリートの属性はどう変化した(しなかった)か」という2つの分析軸のなかで、ふくらみをもって検討することが可能になった。ただし、この本では、官職保有者の増加の理由やメカニズムについては、十分に論じられていない。今後の課題ということなんだろう(結論にもそう書いてあるが)。