Bringing the Empire back Home

Herman Lebovics, Bringing the Empire back Home (Durham : Duke Universiry Press, 2004)

(1)ルボヴィクスといえば、かつて『The Alliance of Iron and Wheat in the French Third Republic』を興味深く読んだ記憶がある。これは件の「鉄と穀物の同盟」説をフランス第3共和制に適用した、シャープな歴史書だった…で、今度の本は、現代フランスにおける

  • ラルザックの反基地闘争の勃発(1970年代)
  • 文化省の設置(1960年代)
  • 「文化(patrimoine/heritage)遺産」政策の開始(1970年代)
  • ルペンの登場(1980年代)
  • 非欧米美術品を展示する「ケ・ブランリ美術館」の設置準備(1990年代)

という5つの事象の経緯をたどり、その背景にあるものを析出する。しかし、だ。これらは、せいぜいが1960年代までしかさかのぼれない事象だろう。この本は歴史書なんだろうか、それともルポルタージュなんだろうか。別に歴史書である必要はないが、「歴史書」の定義とは何なんだろうか。

(2)さて、ルボヴィクスによれば、これら5つの事象には「植民地の放棄」という共通の原因がある。つまり

  • 植民地の放棄…フランス軍の再編…ラルザック基地の拡張計画…反基地闘争の勃発
  • 植民地の放棄…「文明化の使命」の対象として「地方」が見出される…文化省の設置
  • 植民地の放棄…フィールドがなくなった考古学界・人類学界が国内を向く…「文化遺産」というコンセプトの登場…同政策の開始
  • 植民地の放棄…批判対象としての移民の「発見」…ルペンの登場
  • 植民地の放棄…非欧米地域との新たな付き合い方の模索…ケ・ブランリ美術館の設置準備

というわけだ。そういわれればそうだという気もするが、他の原因もあるだろう(実際、ちょっと行論が強引なところも見受けられる)。歴史における因果は、いかにたどられるべきだろうか…と、いろいろと考えさせられる本ではあった。