『近代フランスの歴史』

谷川稔・渡辺和行編『近代フランスの歴史』(ミネルヴァ書房、2006)
いただきもの(谷川さん、平野さん、長谷川さん、中山さん、サンクス)。

(1)アンシアン・レジームから今日に至るフランスの歴史をたどる教科書。通史からなる第1部と、女性、植民地、移民、経済といったトピックを論じる諸章からなる第2部の、二部構成。当代切ってのフランス史学者が参集した、贅沢な著者ラインナップを誇る。

(2)それにしても、通史や歴史教科書を書く際に問題になるのは、まずはなによりも記述のカバレッジである。限られたスペースに必要な情報をもりこむには、適切なテーマ設定、史実の取捨選択、そしてストーリー構築が必要だ。それらが記述のカバレッジを決定する…というわけで、この本は、基本的なテーマとして(多分だが)「国民国家の成立」と「モラル・ヘゲモニーの変遷」を採用する。このうち前者は人口に膾炙したものだが、後者は(ぼくが知るかぎり)編者である谷川さんのオリジナルなアーギュメントである。そして、この本を読むと、この「モラル・ヘゲモニーの変遷」というテーマがかなり高度なカバレッジを実現していることに驚かされる。つまり、よく出来た教科書だということだ。

(3)それでは、両者のほかに、この意味で優れたテーマは存在するのだろうか…そんなことを、ちょっと考えてみようか。それにしても、年度末というのは、たくさんの本を頂き、拝読することができて、とても幸せな時期である。来年度のしごとさえなければ、だが。