『マルクスの使いみち』

稲葉振一郎松尾匡・吉原直毅『マルクスの使いみち』(太田出版、2006)

(1)厨先生こと稲葉くんが、編者兼インタビュアー兼対談者として、松尾匡、吉原直毅という、日本を代表する分析的マルクス主義経済学者と座談会をひらくという形式で作られた、分析的マルクス主義の入門書。議論の中心になるのは、分析的マルクス主義経済学創始者にして指導者であるジョン・ローマーのしごとである。

(2)「搾取」を重視する立場は私的所有の絶対視につながるが、「不平等」という観点は私的所有を相対化しうる、といった、興味深い指摘がちりばめられている。さらに、200ページをこえたあたりからは、議論がドライブしていって、いいなあ。

(3)ただし、一冊の本としてみた場合、まとまりも、ストーリーの流れも、うーむ。たとえば、肝心のローマーの所説が説明されるのは最後のほうだし、吉原さんと松尾さんの立場の違いも、わかったようでわからない。日本の伝統芸能とでもいうべき「座談会」という形式を採るのは、もうやめにしないか?