『パリ史の裏通り』

堀井敏夫『パリ史の裏通り』(白水社・Uブックス、1999)
おすすめ。

(1)10年以上前のことになるが、拙稿抜刷を堀井さんに謹呈したことがある。丁寧な礼状には、大略「まもなく大阪大学を退職するが、退職したらパリで暮す予定である」ことがしたためられてあった。ながらくフランスに滞在したこと、フランスの学術雑誌に論文を掲載したこと、そして、のちに欧米のフランス史研究において重視されることになるテーマ(食料供給)にいちはやくとりくんだこと、どの点を取ってみても、堀井さんは日本のフランス史学界にとって「早すぎた」人だったという観がある……あまり根拠はないが。もちろん、フランスに長期滞在し、フランスの学術雑誌に論文を掲載し、重要なテーマに着目した歴史学者は、堀井さんだけではない。初期の例としては、たとえば、先日亡くなった二宮宏之さんがいる。そして、日本のフランス史学界に受容され、のちには主導する立場にたった二宮さんと比較するとき、堀井さんの「早すぎた」性は、ひときわ際立つ。

(2)そんなフランス史学者の手になる歴史エッセー集。パリ下町の「あの」空気が、一瞬よみがえる(ここで「あの」という形容詞を強調したことに注意!!)。