『現代政治理論』

川崎修・杉田敦編『現代政治理論』(有斐閣有斐閣アルマ、2006)
おすすめ。

(1)政治哲学についての教科書。じつによくまとまっていて、読んでいて感心する。一番の読みどころは、第4章「現代の自由論」だろう。ぼくの好みのなせるわざなのかもしれないが、これはつまり、今日の社会において自由のはらむ諸問題こそが(平等や公共性やデモクラシーの諸問題以上に)重要であることを反映しているのだろうか、もしかして。

(2)第9章「公共性」では、桜井万里子『ソクラテスの隣人たち』(山川出版社、1997)について

桜井万里子は、ハーバーマスの公共性概念を援用しながら、古代ギリシア世界でも二つの領域の区別は従来考えられていたよりも曖昧で、区別の引き直しの可能性が常にあったことを指摘している。古代ギリシア語で「公共の」を意味する形容詞は、実は二つあった。一つはポリスに関わる厳密な意味での政治的領域、制度化された市民団をさす語で、「デーモシオス」という。もう一つが先ほどもふれたコイノスである。コイノスは厳密な意味では政治的領域(デーモシオス)にも私的領域(オイコス)にも属さない、「日常生活のレヴェルでの公的な領域」を意味した。コイノスの世界は、多様な集団が並存する空間であって、ポリスの市民団からは排除されていた奴隷、外国人、女性といった人々も含まれていた。こうした人々も、コイノスにおけるコミュニケーションの流れに加わることで、広い意味での政治に関与することも不可能ではなかったという例を桜井は紹介している(236頁)

という指摘がされている。桜井さんといえば「マリリン」の愛称で知られる(本当か?)優れた古代史学者であり、ぼくも色々と懐かしい思い出があるが、そんなに面白いしごとをしていたとは知らなかった。さっそく読まなければなるまい(でも、先立つものが…)。