『丸山眞男』

苅部直丸山眞男』(岩波書店岩波新書、2006)

(1)気鋭の日本政治思想史学者の手になる、日本政治思想史学者・丸山眞男の評伝。丸山のアーギュメントの独特の魅力は、それが矛盾をはらんでいることから生じる、という立場に立つ。かくスタンスを定めることのメリットは、おそらくは

  • 丸山を全肯定するのでもなく、全否定するのでもない、客観的な評価が可能になる
  • おそらくは丸山の方法論とシームレスに接合されうる

という2点にある。そして、あえていえば、その問題点は、読者に重層的な読解を要求するところにある。もちろん重層的に読解しうることはデメリットではないが、ぼくのような素人には、奇妙に読みにくい本とうつるかもしれない。

(2)丸山の矛盾を重視する評論といえば、まず思い出すのは、件の冒頭のフレーズで知られる吉本隆明丸山眞男論』だろう。ただし、吉本は、「戦争体験」と「大衆蔑視」というキーワードを用いて、丸山の矛盾を整合的に理解しようとする。これに対して、苅部さんは、あくまで矛盾を矛盾とみなし、クールな分析を続ける。この、いわば「禁欲的な」姿勢は、驚きと賞賛に値する。