『連帯の新たなる哲学』

ピエール・ロザンヴァロン『連帯の新たなる哲学』(北垣徹訳、勁草書房、2006、原著1995)
おすすめ。

(1)厨先生こと稲葉くんの戯言から始まった企画、ここに堂々実現。フランスを代表する政治思想史学者の手になる福祉国家の再検討の書。現代日本社会がはらむ諸問題を理解するうえでも必読の一冊といってよいだろう……稲葉くんも、た・ま・に・は・いいことをするもんだ。

(2)ロザンヴァロンによれば、既存の福祉国家は、社会保険が重要な位置を占めていることからわかるとおり、《保険システムによるリスク・シェアリング》という考え方にもとづいている。しかし、今日、保険システムは、

  • 大災害のリスクが巨大化している
  • 個人主義的な「自己責任」イデオロギーが浸透しつつある
  • 医療の分野において遺伝学が進歩してきた
  • 保険システムではカバーできない垂直的再分配が重要になってきた

といった動向のために、機能不全をおこし、福祉国家を危機に陥れている。福祉国家の現状に関するこんな本書の診断は、おなじくリスクの問題を論じているベック『危険社会』(法政大学出版局)と比較しても、じつにシャープで、目からウロコ。

(3)それでは、ぼくらはどうすればよいか……ここからロザンヴァロンは《労働、社会参入、租税》といったキーワードで特徴づけられる「能動的福祉国家」を構築するべきことを説くが、詳しくは本書を見よ。

(4)ロザンヴァロンに学んだ北垣さんの訳と訳者解題も秀逸。一気に読める……というのは、さすがに言いすぎかもしれんが。