『資本主義史の連続と断絶』

柳澤治『資本主義史の連続と断絶』(日本経済評論社、2006)

(1)かつて柳澤さんが『ドイツ中小ブルジョワジーの史的分析』(岩波書店、1989)を出版されたとき、自分のなかでどうにも収まりが悪く、消化するのが難しかったことを思い出す。《中産的生産者層…産業資本家と不熟練賃金労働者への両極分解…前者の各種独占資本化》というスキームに慣れきっていたせいか、「熟練職人」とか「旧中間層」ではなく「中小ブルジョワジー」という用語が持ち出された理由について、まったく見当がつかなかったからだ。今回の本を読んで、その含意が《ほんの少し》わかったような気がする。つまり、多分だが、

  • 第二次世界大戦後の西ドイツの経済発展を考える際、いわゆる「独占禁止型資本主義」((c)岡田与好先生)経済システムがある程度機能したことをいかに理解するべきかという問題は、避けて通れない
  • この類型の経済システムを担ったのは中小規模の経営者たち、つまり「中小ブルジョワジー」である
  • ということは、ドイツ経済史において「中小ブルジョワジー」は《両極分解し、消滅するべきもの》ではなかった

ということなんだろう。「熟練職人」とか「旧中間層」を論じることとは、議論の次元が違うわけだ。

(2)圧巻は、1848年プロイセン議会に提出された1万以上の請願のうち3千余通を分析する第8章「三月革命期における農村民の変革意識」だろうか。やっぱり最後はデータが大切なのである。