『ヴィーナスの誕生』

岡田温司ヴィーナスの誕生』(みすず書房・理想の教室、2006)

(1)ボッティチェリヴィーナスの誕生」を、美術史学における様々な手法を用いて解読する書。

(2)基本的にはイコノロジー(図像解釈学)を活用するが、しかし、それがともすればロゴスの学になりがちであることを批判し、この絵が書かれたルネサンスフィレンツェの文化的な環境たる「生きて動いている都市の祝祭的な世界」(15頁)のなかに置きなおして捉えるべきことを説く。たしかにそれはそうだし、この手法を用いることによって明らかになることは多いだろう。ただし、イコノロジーを「目に見えるものは目に見えないものより、物質は精神より、イメージは概念より、表層は深層よりずっと劣るもので、前者は、後者へと高められ置き換えられてこそ、真に意義あるものとなるという大前提」(66頁)にもとづくアプローチと定義し、それに「今日わたしたちが歴史人類学とか視角文化研究とか呼んでいる方法」(104頁)を対置し、後者の優位を説くような口吻を漏らすのは、あまり納得できない。素人としては、両者は次元が異なるように思うのだが。