『マーク完答28・新課程版』

尚文出版編集部編『マーク完答28・新課程版第2版』(尚文出版、2006)

(1)拙著『歴史学ってなんだ?』(PHP新書、2004)が、高校国語の問題集に取上げられた。堂々の9ページ、書いた本人もびっくりである。原著者に対して利用の挨拶の一言もないのはいかがなものか、という気もするが、さっそく解いてみる……で、個人的には白眉は問2。

第1問 次の文章は、「個々の史実をつなぎ合わせ、まとまったイメージ(歴史像)を描く作業である『歴史の解釈』無意味・不可能である」という認識に対して意見を述べたものである。これを読んで、後の問い(問1〜6)に答えよ。(配点50)

                  • -

 国家を建設するに際して、民族という考え方はとても有効なツールです。ぼくも、「日本という国家は日本人という民族からなっている」なんていわれると、思わず「それもそうだよなあ」という気がしてしまいます。実際、明治維新後の政府が「日本民族」をキョウ【チョウ】(ア)したのは、それまで藩の集合体という性格が強かった日本を一刻も早く一つの国家としてまとめ、富国強兵と文明開化を実現させるためでした。
 でも、「民族」は想像され創造されたイメージであり、つまりはフィクションであるとすると、どの民族が正統なのかを判断することは困難です。たとえば、南スラブ語をしゃべるということで特徴付けられる「ユーゴスラヴィア民族」が民族だとすれば、ハプスブルク的な文化を持つということで特徴付けられる「クロアチア民族」だって民族だといえるはずです。これは、単なる言葉遊びではありません。クロアチア地方に住む人にとっては、自分が「ユーゴスラヴィア民族」に属するのか「クロアチア民族」に属するのかによって、旧ユーゴスラヴィアからのクロアチア独立運動に対する態度が決まるからです。ですから、民族の正統性を根拠づけるものを探し、みつけることが、人々にとって大きな課題になります。
 こうして着目されたのが、今度は歴史でした。民族の正統性は民族の歴史によって根拠づけられます。たとえば、クロアチア独立運動を支持する人々は「ユーゴスラヴィア民族」よりも「クロアチア民族」のほうが長い歴史を持っているから正統だと主張し、クロアチアの独立を正当化しました。国家はどれも人工的に作られたものだから、その存在を正統化するためには「民族」を利用することが有効であり、「民族」もまた想像され創造されたフィクションだから、その存在を正統化するためには歴史に頼ることが有効だ、というわけです。
 この事態は、なにも旧ユーゴスラヴィアに限られたものではありません。ルワンダでも、ブルンジでも、イスラエルでも、パレスティナでも、メキシコでも、南北朝鮮でも、国家を作り、あるいは維持するために、民族の歴史がもちだされてきました。そして今日でも、世界の各地で、沢山の人々が民族に着目して歴史を解釈しています。【ということは、今日、民族の歴史は「大きな物語」として機能しているわけです。】(A)(以下略…小田中)

                  • -

問2 【】で囲んだ部分(A)「ということは、今日、民族の歴史は〈大きな物語〉として機能しているわけです」とあるが、それはどういうことか。その説明として最も適当なものを、次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)国家を維持するために「民族の歴史」が持ち出されていることからもわかるように、「民族の歴史」は、民族問題を抱える国だけでなく世界各国にも影響を及ぼしていて、多くの人が絶対視しているということ。
(2)世界中の人々が民族に着目して歴史を解釈していることからもわかるように、世界各地の民族によって語り継がれてきたそれぞれの歴史が収束し、今では、「民族の違いを越えた歴史」が語られているということ。
(3)民族の正当性を根拠づけるために「民族の歴史」が持ち出されていることからもわかるように、現在では、民族に関する個々の史実をもとにして「民族の歴史」という歴史解釈がなされているということ。
(4)旧ユーゴスラヴィアからのクロアチア独立運動において「民族の歴史」が果たした役割をみればわかるように、「民族の歴史」は、ともすれば各民族の歴史の長さを競って壮大なものになってゆくということ。
(5)国家を建設するに際して民族という考え方が有効であることからもわかるように、「民族の歴史」は、国家の体制を固め、維持するために創造されたものであり、その機能は現在もいきているということ。

それではここで質問です。

メタ問2 以下の文章の2つの空欄におのおの当てはまる数字を入れよ。
小田中は、正解は【 】にちがいない、わしゃ原著者だぞ、こんなの余裕だぜ、と思った。そして解説集(非売品)をみたら、正解は【 】だった。

メタ問2の正解者先着3名様に、当方の手元に余りまくっている『フランス7つの謎』(文春新書、2005)を著者サイン入りでさしあげます。ご希望の方はコメント欄に回答をどうぞ……って、3人も回答が来るだろうか。