『系統樹思考の世界』

三中信宏系統樹思考の世界』(講談社講談社現代新書、2006)
いただきもの。
おすすめ(追記……書きわすれ)

(1)(生物?)系統学者にして謎の独法研究員にして稀代の読書家でもある三中さんの新作は、《系譜を考える》アプローチたる「系統樹思考」をキーワードに、科学方法論・科学哲学を論じ、「系統樹思考」を共有する諸学問領域を概観し、さらには系統学の基本的な手続きまで説明するという、恐るべき欲張りな本だった。アーギュメントの中核は

 経験科学としての「歴史の復権」―それは、歴史は実践可能な科学であるという基本認識にほかなりません。そして、その実践を支えているのは系統樹思考であり、一般化された進化学・系統学の手法です。
 進化生物学はダーウィン以来の一世紀半に及ぶ道のりの末に、人間を含むすべての生物を視野に入れるヴィジョンをもつにいたりました。それは同時に、関連諸学問をこれまで隔ててきた「壁」をつきくずす古因学を現代に蘇らせ、さらには、科学哲学と科学方法論の再検討を通じて歴史の意味そのものをわれわれに問い直させました。これこそが……進化思想が諸学問にもたらした衝撃だったのです(129頁)

あたりだと思うが、それにしても、充実したブックリストも付いて、これで新書とは……。

(2)第1章がまるまる歴史学方法論にあてられているのは、まいった。歴史学者歴史学方法論を語る場合、どういうわけかその関心の中心は

  • 歴史における因果関係を語ることは可能か

という点に向けられてきた。歴史を因果でつなぐという方法と、三中さん言うところの「系統樹思考」の関係は、一体どんなものなんだろうか……いろいろと考えさせられる。