『心脳コントロール社会』

小森陽一『心脳コントロール社会』(筑摩書房ちくま新書、2006)

(1)pataさんが紹介していたので、さっそく一読。メディアを媒介とした世論操作の近年の形態を「心脳コントロール」と呼び、その特徴を脳科学の知見を利用するところに求めたうえで、正しきメディア・リテラシーのあり方を説く。

(2)たしかに

  • 高名な日本文学研究者である小森さんがなぜ?
  • 脳科学の知見をもとに論じるはずが、いつの間にかフロイトやらユングやらが前面に出てくるんですが?
  • おもに無意識の領域にある「社会的集合記憶」を重視するのは良いとして、無意識のあり方を知る方法がわからないんですが?

とか、色々な疑問はわくだろう。それでも、

誰が得をするのか、誰にとっての「実利的なこと」なのか、どのような「政治的、経済的」な力関係の中で、誰が「覇権」を獲得するのか、ということを考えてみる(173頁)
一つひとつ発生する出来事に対し、「なぜ?!」という問いを発し、原因を言語的に特定し、その原因をもたらした責任が誰にあるのかを明確にしていく(191頁)
現在だけの問題として現象をとらえるのではなく、常に歴史的な過程の中で、原因と結果の関係を明確にし、責任の所在をはっきりさせる(198頁)
与えられた情報について、「本当にそうなのか」「この二者択一しか存在しないのか」「偽りの選択肢の中にはめられているのではないか」と、まず疑ってみる(203頁)

といった、この本が提唱するメディア・リテラシーは、おそらく正しい。もちろん、問題はその先にあるのだが。