『ウェールズ労働史研究』

久木尚志ウェールズ労働史研究』(彩流社、2006)
おすすめ(専門書だけど)

(1)ウェールズにあるスレート鉱山「ペンリン鉱山」で19世紀末に発生した労働争議を対象に、そこに現れた階級関係、コミュニティの特性、あるいは地域性や民族性などエスニシティのあり方を明らかにする。一部(たとえば第5章第5節など)アーギュメントに混乱がみられる点もあるが、それでも、ソースもアーギュメントも、歴史専門書として「ちょうど良い」感じに仕上がっている。

(2)なんといっても

争議に関与した対立軸は、イングランドウェールズ、資本家―労働者、中央―地方、ジェントルマン―ノン・ジェントルマン、国教徒―非国教徒、名望家―民衆、地主―テナント、保守党―自由党(自由労働派)などが挙げられる(250頁)

という文章にみられるように、重層的なまなざしが貫かれている点が、いい。