『リンダリンダラバーソール』

大槻ケンヂリンダリンダラバーソール』(新潮社・新潮文庫、2006、初版2002)
おすすめ。

(1)1990年代初頭のバンド・ブームの牽引者の一人、大槻ケンヂの手になる半自伝小説。表現したいという欲求はあるが表現するものがなく、また、逃げえないものに直面しなければならなくなることを恐れるという、まさにオーセンティックな《青春》が、じつにディーセントな文体でえがかれている。毎週末「イカ天」をみていた大学院生時代を思いだし、ひとしきり懐かしさにひたる。

(2)それにしても、表現したいという欲求はあるが表現するものがなく、また、逃げえないものに直面しなければならなくなることを恐れる、というのは、まさに大学院生時代の自分そのままじゃないか。そう、自意識ばかり膨らみ、しかし内実も展望もなにもかも不在だった、あのころである。大体において、27歳になっても学生!!なんて、どう考えてもモラトリアム人間そのものだし……と、ここまで書いて、はっと気がつく。表現したいという欲求はあるが表現するものがなく、また、逃げえないものに直面しなければならなくなることを恐れる、という点では、いまもさほど変わってないんじゃないか? やれやれ。