『情報社会と福祉国家』

マニュエル・カステル&ペッカ・ヒマネン『情報社会と福祉国家』(高橋睦子訳、ミネルヴァ書房、2005、原著2002)
おすすめ。

(1)かつて来たるべき福祉国家の最先端を行くものとして《スウェーデン・モデル》が喧伝されたことがあるが、情報化時代に突入したこれからは、福祉国家といえば《フィンランド・モデル》だ!! なにしろノキアはあるし、リナックスはあるし、PISAでも一番だったし、それから、それから……えーい、マリメコはあるし、アラビアはあるし、ついでにカッペリもあるぞ。というのは措いておき、この本では社会学者(カステル)と情報学者(ヒマネン)がフィンランドの情報化と福祉の実態を分析している。

(2)情報化社会を類型化するべく、《開放的vs.権威主義的》と《市場主義vs.福祉国家》という2つの座標軸を考える。カステルたちによると、

ということになる(ちなみに《権威主義福祉国家》型情報化社会の例はないんだろうか?)。情報化社会というとグローバル化と仲がよくて、したがって福祉国家とは相性が悪い、という気がするが、そうでもない。フィンランドでは福祉国家と情報化社会が両立しているわけだ。面白い指摘である。

(2)ところが、それだけじゃない。カステルたちによると、フィンランドでは、福祉国家と情報化社会は相互に正のフィードバック関係にある。どうしてフィンランドではそんなことが可能になったんだろうか。カステルたちはこの問題について検討し、その答をフィンランドのナショナル・アイデンティティの強さと、その主要な担い手として国家が認知されていることに見出している。これまた面白い指摘である。

(3)ただし、ナショナル・アイデンティティが強いというのだから、グローバル化に完全にのることは難しいだろう(この本のなかにも、ちゃんと指摘がある)。ここには

ということが示唆されているのではないだろうか。