『世界のどこにもない大学』

都立の大学を考える都民の会編『世界のどこにもない大学』(花伝社、2006)
大学関係者は必読。

(1)東京都立大学がいかに解体され、そこから登場した首都大学東京がいかなる問題を孕んでいるかを教えてくれる書。ここで描かれている事実は、ぼくも含めて国公立大学関係者にとっては、きたるべき近未来において、まったくもって他人事でなくなるだろう……予習のためにぜひ一読を。

(2)本筋からははずれるが、源川真希さん執筆部分に

現在、戦前の旧制高校から戦後にも続いている教養主義的な知の体系を相対化し、その社会的基盤を明らかにする研究が行われている。たとえば、戦後、近代日本と現状の理解に対して鋭い分析を加え、戦後民主主義の牽引役を果たした丸山真男氏について、彼を「大衆」に依拠して知の体系を築いてきた人物として描き、その影響力が「戦後民主主義」と同様に解体していくことを強調するような議論である(竹内洋教養主義の没落』、同『丸山真男の時代』がその代表である)。この議論は、事実の指摘としては一定の説得力はあるのだが、問題はこうした教養主義批判の議論を行う知識人たちの戦略・戦術である。彼らは、教養主義批判ないし戦後的な知に対する攻撃によって現在の大学のあり方を批判しているが、その際には、丸山が「大衆」に依拠したとされるあり方と同様の方法を採用しているのである。つまり彼らは、教養主義とされるものをポピュリズムに依拠して批判し、それによって自己の「学」的位置を高めようとしているのである(126-7頁)

というくだりがある。うーん、丸山のしごとも竹内のしごとも好きなぼくとしては、困ってしまう……のはどうでもよいとして、源川さんの整理によれば、竹内の丸山評価は吉本隆明のそれと正反対の位置に立つことになるような気がするが、そうだったっけ?