Lost Worlds

Jonathan Dewald, Lost Worlds (University Park : Pensylvania University Press, 2006)

(1)19世紀から20世紀にかけてのフランスにおける代表的な(職業的とアマチュアの双方を含む)歴史家たちの言説を分析し、

  • 《社会》は、いかにして歴史学の研究対象になったか
  • 《現在》と《過去》の境界線の存否と、存在する場合の場所について、いかに考えられていたか

を明らかにすることを試みる書。おもな検討対象は、サント・ブーヴ、ルナン、テーヌ、フェーヴル、フランクリン(知らなかった)、そして(なぜか)コンツェなど。

(2)前者の問題についてはあまり論じられておらず、中心は後者の問題。これはなかなか興味深い問題設定だと思うが、ただし

  • 《現在》と《過去》は連続していると考えられたか、断絶していると考えられたか
  • 《現在》の起点たる《近代》はいつ始まると考えられたか

という2つの問題が混同して論じられ、わかりにくい……《近代》の定義もはっきりしないし。

(3)ついでに、出てくる歴史家が偉い人ばかりで、それならそれでちゃんと言説分析しなきゃならないはずなのに、つっこみが甘く、総じて欲求不満を感じさせる仕上がりにとどまっている。要するに「コク」がないんだな、「コク」が……おっ、「コク」って、なかなかいい表現だ。今度査読の依頼が来たときに使ってみよう。