『アソシアシオンへの自由』

高村学人『アソシアシオンへの自由』(勁草書房、2007)
いただきもの。
おすすめ。

(1)新進気鋭の法社会学者・高村くん、待望の単著刊行。国立中央文書館裏のカフェなどで、あーだこーだと議論を交わしたときからはや7年、もうちょっと早くても……というのは贅沢かつ余計な注文だろう。高村くんの現職は「東京都立大学法学部助教授」であり、この間の苦労は想像に余りあるからだ。ちなみにこの4月からは新天地を得るとのことで、本当になによりである。

(2)これまで近現代フランス社会を語る際、ぼくらの念頭にはつねに「ルソー・ジャコバン型」((c)樋口陽一)というイメージがあったといってよいだろう。フランス革命に端を発し、アソシアシオンを含む中間団体をすべて廃止し、国家と個人が直接対峙する社会、というイメージである。しかし、そのフランスでは、1901年、任意団体の創設のありかたを定める、いわゆる「アソシアシオン法」が制定される。これは「ルソー・ジャコバン型」の放棄なのか、その背景には何があったのか、新しく誕生する社会はどんな特質を持っていたか……ことがフランス社会の基底的な特徴にかかわるだけに、諸学問分野において、議論は尽きなかった。

(3)この本は、これら議論が無意識のうちに前提としてきた諸史実をおもに19世紀について再検討し、諸議論の総体に異議を申し立てようとする野心的な試みである。そして

  • フランス革命以来、アソシアシオンが論じられる際には、つねに「ポリス」と「公共圏」の問題が念頭におかれていた
  • 1901年アソシアシオン法はアソシアシオンを「個人間の契約」とみなしたが、その背景には、修道会をいかに取扱うかという問題があった

といった、興味深く、かつ重要なアーギュメントを提示する。田中拓道『貧困と共和国』(人文書院、2006)とともに、ピエール・ロザンヴァロンなどがすすめる「社会的なるものの思想史研究」の成果を十全にとりいれた、優れた研究といえるだろう。

(4)ただし、この本の読後感は、読者によって大きくわかれるかもしれない。高村くんは、法学、政治思想、議会における法案の審議過程、法律の施行の実態など、およそ19世紀のアソシアシオンにかかわるありとあらゆる史実を網羅的に論じるが、その代償として、つっこみがもう一歩だったり議論と議論のつながりがわかりにくかったりするところが散見されるからだ。ただし、この「網羅的に論じる」というスタンスの背景には、高村くんがコミットする「法社会学」のあり方を探るという動機がかくされている……というのは、根拠なき感想です。