『新左翼の遺産』

大嶽秀夫新左翼の遺産』(東京大学出版会、2007)

(1)いわゆる60年安保闘争を担った共産主義者同盟(ブント)を「前期新左翼」と定義し、その思想と行動を跡付けたうえで、同時代の英仏における「新左翼」との比較を試みた一冊。ブントにフランス文化・思想の影響をみてとるとか、1960年代半ばに文化の次元におけるヘゲモニーがフランスからアメリカ合衆国に移行することに、全共闘を代表とする後期新左翼の淵源を求めるとかいった、とてもグローバルな視点が興味深い。

(2)個人的にツボにはまったのは

ブントには、後の新左翼運動が抱え込むことになる暗さがない。運動の高揚期にみられる明るさであったのかもしれない。ブントのリーダーたちは本質的に楽天的で、開放的であり、それが組織の性格に明瞭に反映していた。それはある種のいい加減さが支配していたということでもある(48頁)

というあたりだろうか。
ぼくみたいな素人にとって、日本の新左翼のイメージは「暗い」。それでは世界各地で同様か、というと、たとえばフランスでは違う。例として「League Communiste revolutionnaire」略してLCRという新左翼党派をみてみよう。日本語に訳すと「革命的共産主義者同盟」、おお、なんだか聞いたことがあるぞ……んで、以前フランスの日刊紙『リベラシオン』紙上で、LCR創始者にして長い間リーダー(正式には「スポークスマン」だったか?)だったアラン・クリヴィヌのインタビューを読んだことがある。そこから受けた第一印象は「明るい」というものだった。そして、現在同派のリーダーにして大統領選挙の(ただし泡沫)候補者でもあるオリヴィエ・ブザンスノは、といえば、歴史学修士号を取得してから郵便配達人になったという33歳、これまたやけに「明るい」好青年である。
日本の新左翼の「暗さ」と、フランスの新左翼の「明るさ」。ぼくはこれは文化的な違いによるものかと思ってきたが、大嶽さんの「ブントには……暗さがない」という文章を読むと、どうもそうではなさそうだ。では何が……後期新左翼を扱う次作を、瞠目して待ちたい。