『ブルゴーニュ国家とブリュッセル』

藤井美男『ブルゴーニュ国家とブリュッセル』(ミネルヴァ書房、2007)

(1)いきなり話はズレるが、森本芳樹さんである。森本さんといえばヨーロッパ初期中世史研究者として世界的に名高いが、教育者としても一流だった……と、ぼくは教わったこともないくせに思っている。そのことは、多くの弟子(通称「森本シューレ」)を育てたことを想起するだけでも、十分に明らかだろう。また「弟子に担当を割りふり、定期的にヨーロッパの研究状況を報告させて(ここからが大切だが)情報の効率的な収集と共有に努めた」というエピソードには、心からうならされた記憶がある。さらに、2005年の日本西洋史学会個別報告で質問に立つ姿は、なんというか「若手を育てるぞ!!」という気概にあふれたもので、みていて(変な形容だが)ほほえましかった。

(2)そんな森本さんのたしかお弟子さんにして後継者でもある藤井さんの第2作は、いきなりスタンフォード学派(青木、グライフ、岡崎)の比較制度分析の解説から始まり、ぼくを面食らわせるのであった……が、その後は、近世ブルゴーニュ公国とブリュッセルの関係を財政制度の側面から検討し、今日的な国家の誕生を展望する、という作業がソリッドに続き、ほっと一息。的確な研究史の整理も、50ページにのぼる文献リストも、圧巻である。