『滝山コミューン』

原武史『滝山コミューン』(講談社、2007)

(1)著名な日本思想史学者である原さんが小学校時代に体験した「全生研」教育を回顧した書。ほぼ同じ時代(原さんはぼくの一つ年上)にほぼ同じ学校環境(東京近郊に建設された大規模公団住宅のために新設された小学校)を経験したものとして、よくわかる部分と、想像すらできない驚天動地の部分が並存する。そして、かつて職場に勤務していたとき、例のぶっきらぼうな口ぶりで、ミル『自由論』を愛読していると語ってくれた原さんの姿が思いだされ、深く首肯したわたしであった。

(2)ただし「マンモス団地の小学校を舞台に静かに深く進行した戦後日本の大転換点」という広告コピーはミスリーディングだろう。むしろ、なにも転換しなかったということが、そして、おそらくそれは教育の本質に深くかかわるがゆえであるということが、問題なのである。