『東京市政』

源川真希『東京市政』(日本経済評論社、2007)

(1)「批判的転回以後のフランス歴史学」関係の試訳(5本で合計420枚!!)が終わり、つぎは「言語論的転回以後の歴史学」のドラフト執筆が待っている……のだが、例によってなかなか書出せない。

  • まぁ40枚だし
  • 締切は9月だし
  • 批判的転回とか言語論的転回とか、「転回」ばかりで飽きてきたことは否めないし
  • 言語論的転回については、かなりネタ切れ気味だし
  • そうこう思っているうちに秋になるんだろうが、そのときはそのときだし

などと意味もなく自分に釈明しつつ、現実から逃避するべく東京の百年を描くこの本を読む。

(2)美濃部都政を論じる13から14章は、秀逸な1970年代都市論としても読むことができて、じつに面白い。源川さんは

美濃部都政の行政手法は「対話」と「参加」を特徴としたが……事業の計画と実施をオープンにすると、市民のエゴイズムが介入する恐れがある。だがむしろ市民の多様な要求とエゴを肯定し、市民自身が自主的に利害を調整するように行政が援助するというのである。これこそ、美濃部都政が都民参加に期待したものであった。ここで想定されているのは、みずからの欲望の噴出を調整できる自立的な市民である。美濃部都政の下では、地域民主主義の運動のなかで求められた市民の登場が期待された……いわば「大衆」を「公衆」に変えていく作業であった。美濃部都政が展開した市民形成のプロセスは人々に大きな負荷をかけるものであった。にもかかわらず、住民運動を主体的に担う市民の都政参加が広範囲にみられた。美濃部都政が自立した市民を創出しようとしたとすれば、対抗する保守はこの時期「地域」の枠組を重視していた(292頁)

と述べ、当時の主要な政治的争点は市民形成とコミュニティ再建だったと指摘するが、これはかなり妥当なものだと思う。予告されている続編、つまり1980年代都市論の登場を期待したい。