『トクヴィル』

宇野重規トクヴィル』(講談社講談社選書メチエ、2007)
いただきもの。

(1)祭りが終わって日常生活がもどり、ふたたび「言語論的転回以後の歴史学」を書き継ぐ日々である。シャープなアイディアがなかなか浮かばないため、例によって現実逃避するべく、トクヴィルの専門家として名高い宇野さんが出された新刊書を読む。

(2)宇野さんはトクヴィルの「デモクラシー」概念の核心を、いわば平等と不平等の関係を歴史的に把握するという点に見出し、そこら彼の思想の全貌を描き出そうとする。つまり

トクヴィルは、平等社会においてもなお不平等は残ること、しかしながら、平等社会における不平等は、不平等社会における不平等とはまったく違う意味を持つこと、そしてさらに、平等社会における不平等はなくならないが、その不平等に対する異議申し立てによって、平等化に向けての新たなダイナミズムがつねに生まれてくるということを論じた。彼はこのダイナミズムこそが歴史を動かす、近代社会の最大の特徴であると考えた(76頁)

というわけである。平等と不平等の問題は「想像力」や「象徴秩序」の次元にこそ存在するというトクヴィル(宇野さん)の指摘は、格差社会をめぐる議論かまびすしき今日の日本において、無視できない意味を持っている。