『魅惑する帝国』

田野大輔『魅惑する帝国』(名古屋大学出版会、2007)
おすすめ(ただし5600円+税)

(1)またしても名古屋大学出版会である。とにかくこの版元のプロダクトの質の高さ(打率?)には驚き、うなり、感嘆するしかない。ぼくの勤務先にも出版会があるが、プロダクトの質について名大出版会と比較すると(以下自粛)。

この高生産性の背景にはかならずや尾張商人の伝統が、じゃなくて、立ち上げ時の綿密な経営戦略がある……そうぼくはにらんで(邪推して)いる。出版会設立に際して某有名出版社の某有名編集長を(彼についていた著者ごと)引抜き、さらに、彼が中心となって着々と若手編集者を養成した、というのが、学界内外でささやかれている噂であるが、さもありなん。

起業ってのはこういうものなんだろうね、きっと。

(2)本筋にもどり、複雑なナチスの政治を、「政治の美学化」(ベンヤミン)という観点から、複数の二項対立の絡みあいのなかで捉えようとする書。「政治の美学化」の対抗概念として「芸術の政治化」を提示する試みが成功しているか否かについては評価がむずかしいが、かなり説得的なナチズム像を提示していて面白かった。タイトルもグッド。